【9本目】「パンドラの鐘」@Bunkamuraシアターコクーン
仕事を片付けて、急遽当日券で鑑賞した。
初のシアターコクーン!
2階席の4列目センターでとても見やすかった。2階はお客さんまばら。一階もちらほら空席がある感じだった。
あらすじ
太平洋戦争開戦前夜の長崎。
ピンカートン財団による古代遺跡の発掘作業が行われている。考古学者カナクギ教授の助手オズは、土深く埋もれていた数々の発掘物から、遠く忘れ去られていた古代王国の姿を、鮮やかによみがえらせていく。王の葬儀が行われている古代王国。兄の狂王を幽閉し、妹ヒメ女が王位を継ごうとしているのだ。従者たちは、棺桶と一緒に葬式屋も埋葬してしまおうとするが、ヒメ女はその中の一人ミズヲに魅かれ、命を助ける。
ヒメ女の王国は栄え、各国からの略奪品が運び込まれている。あるとき、ミズヲは異国の都市で掘り出した巨大な鐘を、ヒメ女のもとへ持ち帰るが……。
決して覗いてはならなかった「パンドラの鐘」に記された、王国滅亡の秘密とは? そして、古代の閃光の中に浮かび上がった<未来>の行方とは……?
作・演出・キャスト
■作
野田秀樹
■演出
杉原邦生
■出演
成田 凌 葵 わかな
前田敦子 玉置玲央 大鶴佐助
森田真和 亀島一徳 山口航太 武居 卓
内海正考 王下貴司 久保田 舞 倉本奎哉 米田沙織 涌田 悠
柄本時生 片岡亀蔵 南 果歩 白石加代子
感想 ※ネタバレあり
急遽観に行くことにしたので、ストーリーはざっくりぼんやり…
「長崎」、「ピンカートン」のワードから、→原爆がからむ話?くらいの理解。
せめて、舞台中「現代」と言われているのがどの時代なのかを把握してから見るべきだった。第二次世界大戦前夜だったんだね。
入ってみたら、板や機材がむき出しの舞台セットで、ポスターから想像していた鮮やかさやゴテゴテ感が全くなかったので拍子抜けした気分に。
でも開演早々、高い天井から紅白の幕が降りてきた瞬間におお〜!となりました。
太古と現在(第二次世界大戦前夜)が交錯する物語に途中混乱しつつなんとか見た。
太古も現在も、地下に埋めておくべきだったもの「パンドラの鐘」を掘り起こしてしまった。その鐘の内部には、原爆の作り方が記されている。
(鐘が原爆「リトルボーイ」の形をしていることに、後半でようやく気が付いた)
ミズヲの名前の由来は、原爆が落とされた長崎で聞いた「水を」の声。そこで彼も亡くなって、太古の世界でヒメ女に出会ったんだね。(過去の記憶を語るこのシーンは、オレンジの小さくて強い電球一つで舞台を照らしていて、引き込まれた)
ヒメ女はミズヲに同じ絶望をもう一度味わわせたくないという想いもあって、原爆の作り方が記された鐘とともに自分の身を地中に埋める。
鐘の中からの声が途絶え、ミズヲがヒメ女に、「化けて出てこい」と叫んだのが…涙
化けて出てきたら「やあ!」って挨拶するのかな。
古代の世界では、国を守るため身代わりになった女王がいたけど、現在のこの世界では現れなかったわけだ。原爆が投下される瞬間の演出にどきどきした。
そしてラスト。舞台後方の扉が開く演出には息を飲んだ!
あの扉の向こうは外だったんだ・・・!
この祈りの物語は現代につながっているんだな。
―――賭けをしましょう。あなたの服に触れず、その乳房に触れた日のように、いつか未来が、 この鐘に触れずに、あなたの魂に触れることができるかどうか。滅びる前の日に、この地を救った古代の 心が、ふわふわと立ちのぼる煙のように、いつの日か遠い日にむけて、届いていくのか。
ヒメ女、古代の心は、どちらに賭けます?俺は、届くに賭けますよ。
1945年には届かなかった魂が、これから先届かないことのないようにしなければ。
23年前に初演で、蜷川幸雄と野田秀樹がそれぞれの演出で上演したんだそう!それはすごいな〜!それぞれどんな演出だったのか、かなり気になる。
キャストごとに一言
成田 凌(ミズヲ):初舞台だったそうで、そのことにまず驚いた。むしろ舞台に出ていそうな雰囲気がある気がする…なんとなく。声がよく聞こえたし、自身の過去についてや、姫がいなくなってからの独白には引き込まれた。
葵 わかな(ヒメ女):鈴の音のようなええ声!ビジュアルは「14歳」という設定に無理がないと感じるほどに幼く可愛い。無邪気でありながら、信念や凛とした軸がしっかりと見えて素敵でした。鐘の上での微笑は美しかった。
前田敦子:出演作を生で見るのは初めて。役にぴったり!
玉置玲央:一番台詞が明瞭で聴きとりやすかった!とても安定していて舞台にいるだけで安心感がある。すごい。
大鶴佐助:「僕は歌う~」を見て気になり、今回も唯一の存在感を放っていて良かった!少し前回と似通ったキャラクターだったので、全く違う雰囲気の役も見てみたい。
柄本時生:こちらもまた安定感とユニークな存在感があった。
片岡亀蔵:弟子の成果を横取りするこずるい感じ、お人よしの感じ、狂った王の雰囲気をそれぞれしっかりとまとっていた。
南 果歩:かわいい!誰かに似ているなぁと思いながら観ていたが、結局誰かわからず。(タカラジェンヌさんの誰かかも)前田敦子との親子関係がしっくりきた。
白石加代子 :貫禄がすごい!
【10本目】劇団扉座第73回公演『神遊 ―馬琴と崋山―』@座・高円寺
「神遊」は「こころがよい」と読む。
公演について(作・演出より)
滝沢馬琴を書いてみます。馬琴の息子・宗伯の親友であり、馬琴がその息子以上に好ましく思っていた、といわれる、武人にして天才画家であった渡辺崋山との関わりを中心に描きます。
馬琴は、29年前にスーパー歌舞伎「八犬伝」を三代目猿之助さんの許で書かせて頂いて以来、いつか取り上げようと決めていた人物です。早すぎる息子の死と、幕府の弾圧による崋山の死。視力を失った上に、ふたりの息子に先立たれ、尚、創作に狂う姿に、呆れつつ惹かれます。
昨年上演しました、杉田玄白『解体青茶婆』に続く「いつかやると決めていたけど、ついにその時が来たシリーズ」第二弾です。
渡辺崋山=そういえば日本史で聞いたことある名前だな…
程度の認識。上の文章の時点で、知らないことばかり。
演出・出演者
【作・演出】
【出演】
岡森 諦 中原三千代 有馬自由 伴 美奈子 山中崇史 犬飼淳治 鈴木利典 松原海児 野田翔太 早川佳祐 砂田桃子 白金翔太 北村由海 紺崎真紀 山川大貴 小川 蓮 翁長志樹 大川亜耶
感想 ※ネタバレ注意
泣けました…これはあかん…!
ポスターから想像していた重苦しさはあまりなく、2時間半が苦に
冒頭、いきなり語りのお兄ちゃん(犬飼淳治)が登場して明るい雰囲気にしてくれた。
この語りがとても良い味を出していて、時には講談師のように語ったり、
そして、渡辺崋山(山中崇史)の、明朗快活、親しみやすく正義感のある人気者ぶりも、
でも、物語の終盤でようやくわかったのは、小説を書き上げることにとにかくこだわった馬琴の覚悟と、色々と不器用すぎだったということ。
崋山が捕らえられ、
でも、嫁である路(伴 美奈子)が「もうおやめください」
それがわかるのが、馬琴が両目を失明したとき。
照明のない真っ暗な空間で、馬琴の声が響く。(すごく印象深い照明)
八犬伝を完結させるために、路に口述筆記を頼んだ馬琴。これまで散々ひどい扱いをしてきた路に対して「お前しかいないんだ」と、ちょっと都合が良すぎるんじゃないの発言をする。
それでも、路は涙して、「八犬伝を完結させることを選んでくれたのが嬉しい」と泣く…
馬琴からかなり酷い扱いを受けていたのにですよ。一番近くでずっとその姿を見てきたからこそわかる馬琴の本心
真っ暗になった中で、馬琴の心と路の心が通じ合った。
その後、馬琴が路をたたえた文章が読まれて、本当にじーんとした。
そしてラストシーン。崋山が自害し、八犬伝が完結したあと。
花見の席で馬琴が叫んだ言葉から、馬琴が崋山のことをどれだけ深く思っていたのかがわかり、
唯一無二と言っても良い尊敬できる兄弟だもんね…想いを封じて、小説の完結に心血を注いだ馬琴と、それを支えた路の覚悟よ。。
馬琴が28年間かけて、魂を込めて書いた「南総里見八犬伝」
思いのほか馬琴推しの感想になってしまったが、崋山サイドもとてもよかった。
崋山のすがすがしい生きざまと、弟子たちや竹との心が通い合う交流が描かれていて心が洗われた。
特に、崋山が弟子たちにこれからを託したシーン。
帰り道、「泣きすぎた」という女性が数人いて静かに共感した。
良い劇団、役者、演目に巡り合えることの幸せを嚙み締めた帰り道でした。
【8本目】劇団四季「ノートルダムの鐘」@KAAT
観劇100本ノックが始まる前からチケットを取っていて、本当に楽しみにしていた公演!!会社の振休を使って観てきた。
まずは一言。素晴らしかった・・・・
ストーリー
カジモドの切なく悲しい愛の物語。
そのなかに見出す、ひとすじの光とは――。
四季の公式HPのストーリーを載せようとしたら、かなり詳細に書いてあって長かったので割愛。15世紀末のパリが舞台。
キャスト
こちらです。
四季の俳優さんは詳しくないものの、四季ファンの友人に見てもらったら「素晴らしいキャスト👏」とのこと。確かに素晴らしかった!
感想 ※ネタバレあり
四季の作品の中で一番好きかもしれない、というくらい良かった…!
観劇前の知識としては、「ディズニー映画は2回くらい観た気がするけど記憶はおぼろ…」「たしかカジモドがエスメラルダと結ばれなくて残念だった」という感じ。
でも楽曲が好きだったので、サントラは、映画版、四季版、アメリカ公演版も聴いていた。ただ、曲をつなぐ短い曲やセリフはカットされていたりするので、完全なストーリーがどうなっているのかは知らなかった。
観劇をかなり楽しみにしていたので、チケットを取った2月から、「サントラ絶ち」をして備えていた。(サントラを聴き込みすぎてサントラとの違いが気になってしまう現象を避けるため!笑)
それでもサントラの方が良かったらどうしよう、期待しすぎかな、という不安を抱えつつ見ましたが…
カジモドも、フロローも、隊長も、エスメラルダも。
メインの登場人物が皆、救いようのない極悪人でも、清廉潔白な美しい人でもない。そんな人間味あふれるところに共感したし、観ていて苦しくなった。
誰もが、弱さや欲望を持っている。
みんなかわいそうだ。
しかしあんな終わり方だとは思わなかったな…
カジモドはエスメラルダと永遠に一緒にいることを望み、その通りになったと言えるかもしれない。でも、フロローがいなくなって、保護者を失ったカジモドは生きていこうと思ってもできなかったのかなと思ったら、辛い。
整理できていない箇条書き感想
・みんな歌が上手い!安心して集中できた。
・カジモド、どっしりした声がぴったり
・フロロー 地獄の炎良かった!!カッコ良い!!
・隊長思ったよりいい奴やんけ
・聖歌隊グレイト。
・舞台ならではの演出に鳥肌
・カジモド、初めは普通の格好で出てきて、カジモドに変化する様子を舞台上で見せるなんて…!
・石(ガーゴイル)が動いたり、途中でただ布だけ残してカジモドを一人にするところも良い。
・鉛を降り注ぐ時の布の演出も素晴らしい
・フロローが聖堂から落ちる演出はかなり衝撃的。すごい速さで落ちた。恐ろしくてハッとなった。
・エスメラルダ「あなたも美しいわ」の歌詞で泣く
・ずっと友達でいたかったよね…
・光のなかへ去っていくエスメラルダ。美しいけど悲しい
・最後また出てくる3人(エスメラルダ、フロロー、隊長)
自分にしかわからない感想になってしまった…!
色々じわじわ思い出す気がするので、思い出したら追記したい。
もう一回、違う席で観たいな~~!
【7本目】Office8次元「新説・羅生門 / 蜘蛛の糸」@小劇場B1
この日は、昼の「平家物語」から続けて夜に2本目を観劇。文学縛りにしてみた!
概要・あらすじ
芥川龍之介の『羅生門』『蜘蛛の糸』という二大作品を
演劇 ×三味線 ×打楽器の編成で大胆に舞台化!
混迷する現代に浮かび上がる、新しい芥川の世界。
圧倒的な真実が、その身に迫る…!
■あらすじ
『新説・羅生門』
天変地異の災害が世の中を襲っていた頃。雨やみを待つ一人の男がいた。男が雨を凌ぐため門の楼上に登ると、女の死体から髪を引き抜く異様な姿をした老婆と遭遇する。男の姿は、次第に、平安の時代と現代を交錯して…。
人間が犯す罪の根元を探る挑戦作!
『新説・蜘蛛の糸』
地獄に落ちた、カンダタという名の大泥棒。彼は以前一度蜘蛛を助けていたことから、お御釈迦様によって救いの手が差し伸べられる。それにすがるカンダタだったが…。数多の人が愛する芥川の名作を、音楽とともに軽快にアレンジ!
あなたがたどり着くのは極楽?それとも地獄?
出演
淺場万矢
岩田桃楠(三味線)
佐野幹仁(打楽器)長尾友里花
上地大星
中原正人(三味線)
感想 ※ネタバレあり
「羅生門」、「蜘蛛の糸」どちらも、原作は教科書や本で読んだことがある。
「羅生門」は黒澤明の映画も見て衝撃を受けたはずなんだけど、あいまいな記憶になってしまっているのが正直なところ…
この程度の知識で観劇した。
劇場は初の小劇場B1(下北沢)。
上手にパーカッション、下手に三味線の席があり、舞台の下には色とりどりの布が敷き詰められていた。
パーカッションの上でくるくる回っていた物体は何だったのだろう…?もっとよく見れば良かったな。重要な仕掛けを見落としていたのかもしれない…
一回の観劇で全ての仕掛けに気が付くのは不可能だし、まあ仕方ないと割り切ろう。
「羅生門」
歌から始まったのが予想外でびっくりした。
歌も含め、全編通して芝居の迫力がすごかった…!
芥川龍之介の羅生門の世界と、現代の実際にあった事件がリンクする構成になっている。
実際にあった事件というのは、2018年に起きた東海道新幹線車内での無差別殺人事件。
当時は衝撃だったが、時を経て記憶のかなたに行ってしまっていた。その事件を思い出しつつ、犯人である小島については全く知らない部分も多々あり、驚きながら観た。
脚本は、小島の手記などを元にしながら書かれたらしい。
観劇中や幕間には、「善悪、倫理、人間とはなんだろう?」ということを考えた。
ただ、考えを整理するのは時間がかかりそうだなと思っていたら、終演後の出演者によるトークを聞き、伝えたかったことを知ることができた。
お話によると、「罪を犯してしまった人には何かそうさせてしまった理由があるのではないか」、「人間はささいなことがきっかけで善にも悪にもなる」という想い(やや意訳ですが)で脚本を書いたそうだ。
なるほど…
そういった人間の描写をものすごい熱量で演じていた出演者に加え、セットや照明も印象的で、今回はとてつもない「孤独」を感じた。
雨やみを待つ下人と、生きるために死体の髪を抜いていた老婆。
最後は「下人の行方は誰も知らない」と終わる。
今よりもずっと孤独な時代だったんだな・・・と、寂寥感を覚えると同時に、そんな環境で生きていく人間の強さも感じた。
芥川龍之介の見事な文章を聴きながら、物語に没頭できたと思う。
(終演後のトークでは、「芥川の文章は読みやすすぎて情景が伝わるように読むのが難しい(これまた意訳)」と話されていて、そういうもんか~!と勉強になった)
出演者別に少し…
淺場万矢さん:耳によくなじむ、ちょっと低めの良いお声!!お芝居だけじゃなくて歌も上手でエンターテイナーだなと思った。どっぷり集中して演じられているので、見ていて恥ずかしくならない。また素敵な役者さんを知ってしまった…!
長尾友里花さん:宝塚の舞台にいそうな麗しさ。語り役のような立ち位置で物語をしっかりまとめていて、力のある役者さんだなと思った。
上地大星さん:この役にあっているといわれて嬉しいのかわからないが、ぴったりで説得力があった。目が離せなくなるお芝居。汗だくになって演じられていたのが印象的。
淺場さんと長尾さんは柿食う客の劇団員だそう。
本当にお恥ずかしながら、私は「柿食う客」の舞台を見たことがない。(ファンの友人はいたけど…)が、この舞台を観て、ますます観てみたくなった!
照明について、忘れないように追記。
とても効果的で、カッコよかった!色も、角度も位置も面白い。
刀の刃に反射したり、最後には淺場さんの目に鋭く光が入ったのがなんともいえず刺さった。目に焼き付いた!
「蜘蛛の糸」
重苦しい「羅生門」とは打って変わって、歌や踊りを交えたショーのような淺場さんの一人芝居に。テンションが急にぶちあがったのでびっくりしたけど、楽しかった!
笑いも起きて、なんだかほっとした。笑
一人でこれだけのセリフと動きを把握して魅せる、すごいな~~
極楽へ来た観客に向けて、「(死んでから)下界へ戻るまでしばらくの間ゆっくりして行ってくださいね!」というようなセリフがあって、その解釈いいなと思った。
亡くなった祖父母も今頃極楽でのんびりしているのかな!
「羅生門」に続いて、三味線とパーカッションが世界観を引き立たせていてとてもよかった。
メモ
・公演はカメラ3台で撮っていた。ステージ正面、やや上手、やや下手という位置取り。
・どの劇を観に行っても、コロナを経て、演劇ができることへの感謝、演劇を観に来てくれる観客への感謝を伝えてくれる出演者が多くなったとすごく思う。そんな場面に遭遇するたびに嬉しくなるし、反対に「演劇を続けてくれてありがとう」という気持ちがあふれる。今回もそう思った。
【6本目】「平家物語~語りと弦で聴く~一ノ谷・壇ノ浦」@座・高円寺
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、アニメ「平家物語」など、ここ最近かなりハマって来ているので、迷わず見ることにした。
私の「平家物語」の知識は、学生時代の教科書と、大河とアニメによって構成されている。原文に触れてきたのは、教科書に載っていた序文、敦盛の最期、那須与一、入水くらいなもの。この状態で、はっきりとは意味を理解できない古文を眠らずに聞き続けられるのだろうか…ちょっと不安だけど楽しみ。
あらすじ・見どころ
語りとジャズの魂のセッション
源平合戦が、今、よみがえる―――
あらすじ
【坂落】平家の意表を突き、急峻な崖を馬で駆け下り背後から急襲する源義経軍。平家は一ノ谷合戦で惨敗する。
【敦盛最期】敗走する平家軍を追う源氏の侍、熊谷直実。大将軍と目をつけたのは美しい若武者平敦盛だった。直実は泣く泣く首を討つ。
【小宰相身投】夫の戦死の報せに身重の小宰相は、生きる希望を失い暗い海に身を投げる。
【那須与一】屋島合戦で平家が小舟にかかげた扇の的。義経の命令を受けて、与一は自らの命をかけて矢を放つ。
【壇浦合戦】源平合戦の勝敗を決する壇之浦。意気盛んな源氏方では、義経と梶原景時の同士争いが起きる。平知盛は「戦いは今日が最後。名を惜しめ、命を惜しむな」と味方を奮い立たせる。
【先帝身投】義経に水主楫取を射殺された平家は、船を操ることはできない。「浪の下にも都はございます」と、二位尼は三種の神器をかかえ、安徳天皇もろとも壇ノ浦の海に沈んだ。平家が戦に敗れ、源平の戦いは幕を下ろす。
作品解説・みどころ
座・高円寺で「平家物語」公演を続けて10年目。この街と劇場が私たちの「平家物語」を育ててくれました。2020年から気鋭のジャズベーシスト須川崇志と共演しています。舞台に立ち、原文を語り始めると、830年前の源平の人々が目の前に立ち現れます。激動の時代に厳しい運命を見通しながら、必死で生き抜こうとした一人一人の物語。須川崇志のベースとチェロが激しく、時に切なく見事な即興演奏で絡み合い、まさに心震えるジャスのセッション!先が見えない今だからこそ、「平家物語」の原文の美しさ、力強さ、リアルなドラマを「今を生きる力」として聴いていただけたら嬉しいです。劇場で830年前の物語の目撃者になってください。―――金子あい
今年の、平安・鎌倉ブームに乗っての公演だと思っていたら、なんと10年も継続して行われている公演だそう!これは大変失礼しました。
ますます期待が膨らむ。
キャスト
須川さんに交代したのは2020年からだそう。
それまでは「波紋音」という創作打楽器奏者の永田砂知子さんが演奏されていたとのこと。
感想
身一つと弦による伴奏で平家物語の世界を見せるというのは、かなりの技量が必要だと思うが、長年演じられてきた確かな実力を感じた。
古典の原文が語られるため、理解しきれない部分もあったが十分楽しめた。
劇場で配られていた、ストーリーの概要が載っている冊子のおかげでもあると思う。けっこうちゃんと作りこまれた冊子(しかもフルカラー)を無料で配布してくれたことに感謝。
有名なエピソードが多い中でも、まったく知らなかった「小宰相身投」が印象的だった。
戦死してしまった夫を想いながら、「戦の前日に夫と会った時に、戦はいつものことだと思い来世を契らなかった」と後悔する小宰相…
水に身を投げようとする小宰相を止めようと必死に説得する乳母も悲しい。
そして、水に浮かぶ着物が鮮やかで目を奪われた。
ここの音楽は即興ではなく、バッハの無伴奏(?)だったらしい。
あとはやはり、先帝身投げの「浪の下にも都の候ぞ」。
美しい文章でありながら、とても切なく心に響いたな。
劇場の暗転が素晴らしく、本当に真っ暗に暗転するので、一緒に海の底に沈んだ気持ちになった。
締めくくりには「祇園精舎の鐘の声・・・」も読まれ、これまでの語りを思い返しながら厳かな気持ちで聴いた。薄暗い照明もあいまって雰囲気があった。
ポストトークもあって、せっかくなので聞いてきた。
出演は、金子あいさん、演奏の須川崇志さん、そして波紋音奏者の永田砂知子さん。
永田さんは、「演奏しているときは一緒に物語を生きているので体力がいる」というようなことを話されていて、ようやく客席からゆっくり見ることができたとおっしゃっていた。
永田さんの印象に残っている公演は、後白河法皇御所聖跡だそう。後白河法皇に見られている感じがしたと。それはさぞや雰囲気のある公演だっただろうな。見てみたかった。
金子さんは平家物語の絵巻の前で行った公演が印象的だったとのこと。それもまた面白そう。
演奏のお二人が見ているものは、楽譜ではなく台本らしい。
須川さんと永田さんのセッションも聴くことができた。即興ってすごい!
【5本目】ゴツプロ!「十二人の怒れる男」@本多劇場
映画のタイトルはよく耳にするものの、観たことはない作品。
(ただ、三谷幸喜の「12人の優しい日本人」は大好き!笑)
ストーリー
スラム街に暮らす少年が父親を殺した容疑で起訴された。
夏の暑い日、見知らぬ十二人の男たちが陪審員室に集まり審議に入る。
判決は全員一致でなければならない。
誰もが有罪を確信する中、一人の陪審員が「話し合いたい」と異議を唱える。彼は粘り強く語りかけ、少年に不利な証拠や証言の疑わしい点を一つ一つ再検証するよう、集団心理を導いていく。息詰まる展開で浮き彫りにされるのは、人間の様々な偏見や矛盾、無関心、先入観……。
そして、有罪を信じていた陪審員たちの心は、徐々に変化していく。
これは間違いなく面白いでしょう!
キャスト・スタッフ
塚原大助 / 浜谷康幸 / 佐藤正和 / 泉知束 / 渡邊聡 / 44北川 / 関口アナン / 三津谷亮 / 佐藤達(劇団桃唄309) / 山本亨 / 佐藤正宏(ワハハ本舗) / 小林勝也(文学座) / 木下藤次郎(椿組)
作: レジナルド・ローズ / 翻訳: 額田やえ子 / 演出: 西沢栄治
観劇前に知っていたのは三津谷亮さんのみ。
感想 ※ネタバレあり
客席に入ると、中央に舞台があり、それを囲むように客席が並んでいた。こんな形状になっているとは知らなかったので、始まる前からわくわく!
いざ始まると、12人の陪審員が思い思いに動き回り感情を変化させるので、どう頑張っても目が足りない状態に!笑
映像にするとカット割りの問題で見ることのできない、中心人物以外のリアクションも、舞台なら見ようと思えば見ることができるのが贅沢だと感じた。
しかも、固定の角度からしか見えないのかと思いきや、途中、流れが変わる「ここぞ!」というときに舞台が回転したりするので、色んな角度から見ることができた。
出演者の皆さんは、それぞれが本当にリアルに「その人」として存在していて、全員がはまり役!誰一人として「ちょっと違和感」という人がおらず説得力と安心感があった。色々な種類の声を聞けたことにも満足。どの人にも見せ場があって良い演目だなぁと感じた。
1時間45分、一回もはけずに物語を見せ続ける力量に感服いたしました!
ラスト直前で、ある陪審員にスポットが当たる感じもよかったな~。「あの少年はあなたの息子ではありません」は、なんだか切なかった。
本当に全員良かったが、特に印象に残った方3人をメモ。
陪審員第二号 佐藤 達:不思議な存在感があってスパイス的な感じ
陪審員第四号 塚原大助:まんまアメリカ映画に出ていそうな説得力ある話しぶり!(主宰の方だった!カテコの挨拶は心が伝わってきました)
陪審員第九号 小林勝也(文学座):大事なシーンをしめてくれる。笑いもとる。ベテランの力量を感じた
とても有名な映画があるので、ストーリーを知ったうえで観た方も多かったのではないかと思う。
展開を知っている状態で観るとどう感じるのかも気になった。
客席が舞台をぐるりと囲んでいることもあってか、中央の舞台への集中力が高かった。途中途中で結構笑いも起きていてほっこり。劇場全体の一体感があって、「やっぱり生で見るのはいいな~」とうれしくなった!
ラッキーなことに千秋楽を見ることができて(カーテンコールまで忘れていたけど…)、観客の熱のこもった拍手を聞き、目を潤ませる出演者を見て、「良いもん見たな…」と幸せな気持ちになれた。
【4本目】宝塚歌劇 雪組『夢介千両みやげ』『Sensational!』@東京宝塚劇場
久々の宝塚観劇!!母と一緒に観ることができた。
(私の宝塚熱は2019年がピークで、今はゆったりと、数か月に一回観ている)
今回はお芝居とショーの2本立て。どちらもほとんど内容を調べずに観た。
感想
お芝居『夢介千両みやげ』
始まってしばらくは、ポンポン進む展開に乗り切れずちょっと退屈してしまった。
でも、キャラクターの個性が分かってきてからは素直に笑いながら楽しむことができた!優しい世界のお話でほっとしたな~
以前にも書いたけど、私は映像(特に具体的なものを投影した映像)を使った演出があまり好きではないので、江戸の町を幕に映す演出はちょっとな…と思ってしまった。
役としては、朝美絢さんの役が面白かったな!
朝美さんは美しいジェンヌさんの中でも特に美しいので、三枚目を見ると嬉しくなる。
あとは綾凰華さん。これで退団というのが惜しい…!もっと色々な舞台を宝塚で観たかったと思った。
ショー『Sensational!』
けっこう好きなショーだった!
途中、オペラを上げるタイミングから、隣の席の方があるスターさんのファンらしいことがわかった。私もそのスターさんがけっこう好きなので、隣のオペラが上がったら「お、出てるな」と推理できてありがたかった!笑
こちらもまた序盤は若干退屈してしまったけど、金のターバンのシーン、チョーカーのシーンの衣装が素敵で目が覚めた。(ヒラヒラしていて踊りにくそうだったけども)
綾さんのへ餞別がとても感動的だった・・・宝塚への愛と今までの努力が伝わってきたな。上品な微笑みとダイナミックかつ優雅なダンスのギャップが素敵な方だと感じる。
そして今回、歌や表情が好きな娘役さんを数名発見!
詳しくないので観劇後に調べたら、どうも「野々花ひまり」さんと「希良々うみ」さんと思われる。覚えた!こういう発見があるとすごくテンション上がるね~!
それから毎度のことながら、叶ゆうりさんは観ていて楽しい!つい目が行っちゃう。独自の世界観を全力でお届けしている感じがとてつもなく刺さる!良い役者さんだなぁと改めて思った。
コロナで公演一時中止もあった今回の公演。
そんな中でもずっと輝いてくれる存在に感謝したくなる観劇でした。