観劇100本ノックの記録

1年間で100本の観劇を試みています。

【6本目】「平家物語~語りと弦で聴く~一ノ谷・壇ノ浦」@座・高円寺

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、アニメ「平家物語」など、ここ最近かなりハマって来ているので、迷わず見ることにした。

 

私の「平家物語」の知識は、学生時代の教科書と、大河とアニメによって構成されている。原文に触れてきたのは、教科書に載っていた序文、敦盛の最期、那須与一、入水くらいなもの。この状態で、はっきりとは意味を理解できない古文を眠らずに聞き続けられるのだろうか…ちょっと不安だけど楽しみ。

 

 

あらすじ・見どころ

語りとジャズの魂のセッション
源平合戦が、今、よみがえる―――

 

あらすじ
【坂落】平家の意表を突き、急峻な崖を馬で駆け下り背後から急襲する源義経軍。平家は一ノ谷合戦で惨敗する。
【敦盛最期】敗走する平家軍を追う源氏の侍、熊谷直実。大将軍と目をつけたのは美しい若武者平敦盛だった。直実は泣く泣く首を討つ。
【小宰相身投】夫の戦死の報せに身重の小宰相は、生きる希望を失い暗い海に身を投げる。
那須与一屋島合戦で平家が小舟にかかげた扇の的。義経の命令を受けて、与一は自らの命をかけて矢を放つ。
【壇浦合戦】源平合戦の勝敗を決する壇之浦。意気盛んな源氏方では、義経梶原景時の同士争いが起きる。平知盛は「戦いは今日が最後。名を惜しめ、命を惜しむな」と味方を奮い立たせる。
【先帝身投】義経に水主楫取を射殺された平家は、船を操ることはできない。「浪の下にも都はございます」と、二位尼三種の神器をかかえ、安徳天皇もろとも壇ノ浦の海に沈んだ。平家が戦に敗れ、源平の戦いは幕を下ろす。


作品解説・みどころ
座・高円寺で「平家物語」公演を続けて10年目。この街と劇場が私たちの「平家物語」を育ててくれました。2020年から気鋭のジャズベーシスト須川崇志と共演しています。舞台に立ち、原文を語り始めると、830年前の源平の人々が目の前に立ち現れます。激動の時代に厳しい運命を見通しながら、必死で生き抜こうとした一人一人の物語。須川崇志のベースとチェロが激しく、時に切なく見事な即興演奏で絡み合い、まさに心震えるジャスのセッション!先が見えない今だからこそ、「平家物語」の原文の美しさ、力強さ、リアルなドラマを「今を生きる力」として聴いていただけたら嬉しいです。劇場で830年前の物語の目撃者になってください。―――金子あい

今年の、平安・鎌倉ブームに乗っての公演だと思っていたら、なんと10年も継続して行われている公演だそう!これは大変失礼しました。

ますます期待が膨らむ。

 

キャスト

金子あい(語り芝居)
須川崇志(コントラバス・チェロ)

須川さんに交代したのは2020年からだそう。

それまでは「波紋音」という創作打楽器奏者の永田砂知子さんが演奏されていたとのこと。

 

感想

身一つと弦による伴奏で平家物語の世界を見せるというのは、かなりの技量が必要だと思うが、長年演じられてきた確かな実力を感じた。

古典の原文が語られるため、理解しきれない部分もあったが十分楽しめた。

劇場で配られていた、ストーリーの概要が載っている冊子のおかげでもあると思う。けっこうちゃんと作りこまれた冊子(しかもフルカラー)を無料で配布してくれたことに感謝。

 

有名なエピソードが多い中でも、まったく知らなかった「小宰相身投」が印象的だった。

戦死してしまった夫を想いながら、「戦の前日に夫と会った時に、戦はいつものことだと思い来世を契らなかった」と後悔する小宰相…

水に身を投げようとする小宰相を止めようと必死に説得する乳母も悲しい。

そして、水に浮かぶ着物が鮮やかで目を奪われた。

ここの音楽は即興ではなく、バッハの無伴奏(?)だったらしい。

 

あとはやはり、先帝身投げの「浪の下にも都の候ぞ」。

美しい文章でありながら、とても切なく心に響いたな。

 

劇場の暗転が素晴らしく、本当に真っ暗に暗転するので、一緒に海の底に沈んだ気持ちになった。

締めくくりには「祇園精舎の鐘の声・・・」も読まれ、これまでの語りを思い返しながら厳かな気持ちで聴いた。薄暗い照明もあいまって雰囲気があった。

 

ポストトークもあって、せっかくなので聞いてきた。

出演は、金子あいさん、演奏の須川崇志さん、そして波紋音奏者の永田砂知子さん。

永田さんは、「演奏しているときは一緒に物語を生きているので体力がいる」というようなことを話されていて、ようやく客席からゆっくり見ることができたとおっしゃっていた。

永田さんの印象に残っている公演は、後白河法皇御所聖跡だそう。後白河法皇に見られている感じがしたと。それはさぞや雰囲気のある公演だっただろうな。見てみたかった。

金子さんは平家物語の絵巻の前で行った公演が印象的だったとのこと。それもまた面白そう。

演奏のお二人が見ているものは、楽譜ではなく台本らしい。

須川さんと永田さんのセッションも聴くことができた。即興ってすごい!