観劇100本ノックの記録

1年間で100本の観劇を試みています。

【7本目】Office8次元「新説・羅生門 / 蜘蛛の糸」@小劇場B1

この日は、昼の「平家物語」から続けて夜に2本目を観劇。文学縛りにしてみた!

 

 

概要・あらすじ

芥川龍之介の『羅生門』『蜘蛛の糸』という二大作品を
演劇 ×三味線 ×打楽器の編成で大胆に舞台化!
混迷する現代に浮かび上がる、新しい芥川の世界。
圧倒的な真実が、その身に迫る…!

 

■あらすじ
『新説・羅生門
天変地異の災害が世の中を襲っていた頃。雨やみを待つ一人の男がいた。男が雨を凌ぐため門の楼上に登ると、女の死体から髪を引き抜く異様な姿をした老婆と遭遇する。男の姿は、次第に、平安の時代と現代を交錯して…。
人間が犯す罪の根元を探る挑戦作!

 

『新説・蜘蛛の糸
地獄に落ちた、カンダタという名の大泥棒。彼は以前一度蜘蛛を助けていたことから、お御釈迦様によって救いの手が差し伸べられる。それにすがるカンダタだったが…。数多の人が愛する芥川の名作を、音楽とともに軽快にアレンジ!
あなたがたどり着くのは極楽?それとも地獄?

 

出演

淺場万矢
岩田桃楠(三味線)
佐野幹仁(打楽器)

長尾友里花
上地大星
中原正人(三味線)

 

感想 ※ネタバレあり

羅生門」、「蜘蛛の糸」どちらも、原作は教科書や本で読んだことがある。

羅生門」は黒澤明の映画も見て衝撃を受けたはずなんだけど、あいまいな記憶になってしまっているのが正直なところ…

この程度の知識で観劇した。

劇場は初の小劇場B1(下北沢)。

上手にパーカッション、下手に三味線の席があり、舞台の下には色とりどりの布が敷き詰められていた。

パーカッションの上でくるくる回っていた物体は何だったのだろう…?もっとよく見れば良かったな。重要な仕掛けを見落としていたのかもしれない…

一回の観劇で全ての仕掛けに気が付くのは不可能だし、まあ仕方ないと割り切ろう。

 

羅生門

歌から始まったのが予想外でびっくりした。

歌も含め、全編通して芝居の迫力がすごかった…!

芥川龍之介羅生門の世界と、現代の実際にあった事件がリンクする構成になっている。

実際にあった事件というのは、2018年に起きた東海道新幹線車内での無差別殺人事件。

当時は衝撃だったが、時を経て記憶のかなたに行ってしまっていた。その事件を思い出しつつ、犯人である小島については全く知らない部分も多々あり、驚きながら観た。

脚本は、小島の手記などを元にしながら書かれたらしい。

 

観劇中や幕間には、「善悪、倫理、人間とはなんだろう?」ということを考えた。

ただ、考えを整理するのは時間がかかりそうだなと思っていたら、終演後の出演者によるトークを聞き、伝えたかったことを知ることができた。

お話によると、「罪を犯してしまった人には何かそうさせてしまった理由があるのではないか」、「人間はささいなことがきっかけで善にも悪にもなる」という想い(やや意訳ですが)で脚本を書いたそうだ。

なるほど…

 

そういった人間の描写をものすごい熱量で演じていた出演者に加え、セットや照明も印象的で、今回はとてつもない「孤独」を感じた。

雨やみを待つ下人と、生きるために死体の髪を抜いていた老婆。

最後は「下人の行方は誰も知らない」と終わる。

今よりもずっと孤独な時代だったんだな・・・と、寂寥感を覚えると同時に、そんな環境で生きていく人間の強さも感じた。

芥川龍之介の見事な文章を聴きながら、物語に没頭できたと思う。

(終演後のトークでは、「芥川の文章は読みやすすぎて情景が伝わるように読むのが難しい(これまた意訳)」と話されていて、そういうもんか~!と勉強になった)

 

出演者別に少し…

淺場万矢さん:耳によくなじむ、ちょっと低めの良いお声!!お芝居だけじゃなくて歌も上手でエンターテイナーだなと思った。どっぷり集中して演じられているので、見ていて恥ずかしくならない。また素敵な役者さんを知ってしまった…!

 

長尾友里花さん:宝塚の舞台にいそうな麗しさ。語り役のような立ち位置で物語をしっかりまとめていて、力のある役者さんだなと思った。


上地大星さん:この役にあっているといわれて嬉しいのかわからないが、ぴったりで説得力があった。目が離せなくなるお芝居。汗だくになって演じられていたのが印象的。

 

淺場さんと長尾さんは柿食う客の劇団員だそう。

本当にお恥ずかしながら、私は「柿食う客」の舞台を見たことがない。(ファンの友人はいたけど…)が、この舞台を観て、ますます観てみたくなった!

 

照明について、忘れないように追記。

とても効果的で、カッコよかった!色も、角度も位置も面白い。

刀の刃に反射したり、最後には淺場さんの目に鋭く光が入ったのがなんともいえず刺さった。目に焼き付いた!

 

蜘蛛の糸

重苦しい「羅生門」とは打って変わって、歌や踊りを交えたショーのような淺場さんの一人芝居に。テンションが急にぶちあがったのでびっくりしたけど、楽しかった!

笑いも起きて、なんだかほっとした。笑

一人でこれだけのセリフと動きを把握して魅せる、すごいな~~

極楽へ来た観客に向けて、「(死んでから)下界へ戻るまでしばらくの間ゆっくりして行ってくださいね!」というようなセリフがあって、その解釈いいなと思った。

亡くなった祖父母も今頃極楽でのんびりしているのかな!

 

羅生門」に続いて、三味線とパーカッションが世界観を引き立たせていてとてもよかった。

 

メモ

・公演はカメラ3台で撮っていた。ステージ正面、やや上手、やや下手という位置取り。

・どの劇を観に行っても、コロナを経て、演劇ができることへの感謝、演劇を観に来てくれる観客への感謝を伝えてくれる出演者が多くなったとすごく思う。そんな場面に遭遇するたびに嬉しくなるし、反対に「演劇を続けてくれてありがとう」という気持ちがあふれる。今回もそう思った。