観劇100本ノックの記録

1年間で100本の観劇を試みています。

【27本目】庭劇団ペニノ『笑顔の砦』@吉祥寺シアター

面白かった・・・じんわり沁みる舞台でした。

大雨の中観に行って良かったし、観劇後外に出たら雨が上がっていたのもなんか良かった。

 

 

公演概要

「この人生、酒のツマミになればいい。」

ただ食って、ただ飲んで、ただただ笑っていたかったー。

 

小さな漁港町にある平屋のアパート。

地元の漁師たちが寝食を共にし住み込んでいる。

そのアパートに認知症患者を持つ家族が引っ越してくる。

賑やかに過ごす漁師たちと、介護に奮闘する家族の部屋が隣り合う。

まるで対照的な二つの部屋、二つの時間。

だが、両者は互いに影響しあい、日常が変化していく。

 

2016年岸田國士賞を受賞したタニノクロウの、物語作品の原点。

昨年のフランス公演を経て、いよいよ国内最終公演へ。

 

作・演出 出演

作・演出:タニノクロウ

 

出演:井上和也 FOペレイラ宏一朗 緒方晋 坂井初音 たなべ勝也 野村眞人 百元夏繪  (五十音順)

 

感想 ※ネタバレあり

細部まで作り込まれたセットにまず驚いた。

舞台を中央で分けて、二つの部屋を見せる形。二つの生活を覗き見する感じでわくわくした。会話の中身も個々のキャラクターもリアルだったなぁ。

おでんやら蟹の味噌汁やらが舞台に本当に出てくる。美味しそうな匂いが漂ってきたり、電気を消した後の暗闇、テレビの眩しさ、朝日などを感じられたり、臨場感が溢れる舞台に没入する感覚を味わった。

 

下手の部屋は漁師たちの部屋。上手の部屋は、引っ越してきた家族(正確に言うと認知症のおばあちゃん)の部屋。

日常が少しずつ積み重なっていく様子に目が離せなかった。

 

特に終盤の夜のシーン。

台詞の無い時間がけっこう長くあった。その中で、二つの部屋では大きな転換期を迎える。

下手では22年勤めた弟分の漁師が退職することを告げに来るようす、

上手では認知症で息子を認識できなくなった母と、息子&孫が描かれる。

暗闇の中でテレビの画面や、冷蔵庫の明かりが煌々と光っていたのが印象的だった。

 

最後、その夜が終わり朝を迎える。

ずっとしんどい展開が続いていた上手の家族の、さくら(孫)が朝ごはんを作った朝と、

ずっと笑いが溢れていた下手の部屋の寂しげな朝に感情が忙しくなった。

53歳のたけさんが言った「一人は寂しい」が胸に迫った。

 

でも、最後の最後にくだらない笑いが全てを明るくしてくれて、

なんだかすごくほっとしたと同時に、

こうやって生きていけばいいんだなと勇気をもらった気がする。

ありがとう、クリントイーストウッド

 

どんなにしんどくても、孤独でも、笑える何かを見つけて生きたい。それを共有できる人が一人でもいたらなお良い。それさえあれば生きていけそうな気がした。

 

場面転換で流れる洋楽も、幕に移る文字も陽気でよかったな~