観劇100本ノックの記録

1年間で100本の観劇を試みています。

【13本目】「てなもんや三文オペラ」@PARCO劇場

「seacret war ひみつせん」に続き、これもまた「戦争」の傷を表現している舞台だった。

コロナによって数日分が公演中止となってしまった今作。観客が流れたのか土日の公演がどんどん埋まっていたのだが、ありがたいことになんとかチケットを取ることができた。

 

 

作品概要

作・演出
鄭義信

原作
ベルトルト・ブレヒト

音楽
クルト・ヴァイル

音楽監督
久米大作


出演
生田斗真 ウエンツ瑛士 福田転球 福井晶一 平田敦子
荒谷清水 上瀧昇一郎 駒木根隆介
妹尾正文 五味良介 岸本啓孝 羽鳥翔太 大澤信児 中西良介 近藤貴郁 神野幹暁
根岸季衣 渡辺いっけい

演奏=朴勝哲

 

ストーリー

1956年(昭和31年)、秋、早朝。猫間川沿いの川岸には、トタン屋根のバラックが肩寄せあっている。
その目と鼻の先、川向うに、「大阪砲兵工廠」跡地が見える。かつて、そこはアジア最大の軍事工場だったが、アメリカ軍の空爆で、廃墟と化した。数年前に勃発した朝鮮戦争の「朝鮮特需」で、鉄の値段がはねあがると、「大阪砲兵工廠」跡地に眠る莫大な屑鉄をねらって、有象無象の人々がつぎつぎと集まってきた。彼らは、いくら危険だろうが、いくら立ち入り禁止の国家財産だろうが、おかまいなし。目の前のお宝を、指をくわえて見ている阿呆はいない。夜な夜な、猫間川を越え、環状線の鉄橋を越え、時に、弁天橋の警備員詰所を正面突破して、屑鉄を掘り起こした。そんな彼らを、世間の人たちは「アパッチ族」と呼び、彼らの住む場所を「アパッチ部落」と呼んだ―――
アパッチ族」の親分・マック(生田斗真)は、屑鉄のみならず、さまざまなものを盗んで盗賊団を組織していた。恋人のポール(ウエンツ瑛士)との結婚式を挙げるマックのことを、うとましく思う「乞食の友商事」の社長ピーチャム(渡辺いっけい)と妻のシーリア(根岸季衣)は、警察署長タイガー・ブラウン(福田転球)を脅し、なんとかマックを逮捕させようとするが・・・・・・。マックの昔なじみの娼婦ジェニー(福井晶一)と、ブラウンの娘ルーシー(平田敦子)をも巻き込み、事態は思わぬ方向へとすすむ・・・・・・。

 

感想 ※ネタバレあり

例によって、開演前の15分であわてて予習。元となった「三文オペラ」のあらすじをwikiでざっと読み、「てなもんや~」のHPで演出家、出演者のコメントを読み臨む!

鄭義信さんの、「僕は歌う~」に大感動したのでけっこう期待値は高めだった。(【1本目】参照⇩⇩)

momo365omom.hateblo.jp

結論から言うと、今回はあまり好みではなかったかな…!

笑えて泣けて、セットも良くて楽しかったのだが、「ここを一番伝えたいのだろう」という場面にたどり着くまでが長いと感じてしまった。

 

最後の30分のためのお芝居なのかなと思った。

主人公のマックが、過去の罪と頬の傷の意味を告白したところあたりから。

 

マックは戦場で、現在の警察署長であるブラウンをかばうため、敵兵を殺したことがあった。その時に、殺してしまった兵士にも家族がいることを想い、「一人の兵士の“ただいま”を奪ってしまった」と深く後悔していたのだ。

数々の罪状で逮捕され処刑が決まっていたマックは、ぎりぎりまでなんとか釈放してももらおうとするが、ついに逃げ場がなくなる。

そして最後に言い残した言葉が・・・

「その兵士を殺した罪のために死刑になるつもりだ」

「でも国は、14万人を島に置き去りにして11万人が死んだ。その罪は誰が償うのか?」

本当にそうだ。。。

 

マックが処刑されたあと、残されたマックの妻(?)二人は、夕日を眺めながら灯篭を流す。「平和やねぇ」と微笑み合う、美しくて穏やかな光景。

 

しかし、二人の立つ舞台が割れてその下から現れたのは、苦しみもだえる兵士たち…

 

ここが一番印象的だったな。急に現実に引き戻された気分になった。

兵士たちは、どんなに家族のもとへ帰りたかっただろう。

 

爆撃を受けて静かになった兵士たちの間から、マックが現れる。

灯篭を抱えて、「ただいま」と言った姿と、後ろに浮かんだ数々の灯篭の光に心打たれた。灯籠の一つ一つに命があったんだな、と。

最後はマックの笑顔が見えて暗転。。

ここを見せてくれてありがとうという気持ち。

 

戦争による夥しい数の犠牲者の上に今の平和があるんだよな…。終演後エスカレーターを降りているとき、若者の姿を見て改めてそう思った。

昨日の「ひみつせん」といい、戦争について、舞台だからこそ伝えられることは絶対にあると思う。ドキュメンタリー映像を観ることもできるし大切だけど、舞台でもそれを伝え続けてほしい。

 

音楽について少しだけ

感想が完全に後半に偏ってしまった。

前半はなんだか集中できず…でも隣のお客さんはよく笑っていてほっとした。

そもそも「音楽劇」という認識が甘かったため、予想以上の曲数に驚いた。「また歌うの??」という感じ。でも元がオペラなんだから当たり前だよね。

しかも、「三文オペラ」の原曲をアレンジしていたのだそう!歌詞が関西弁だしオリジナルソングだと思い込んでいた。ここの知識があれば、アレンジを楽しんだりと、もっと深い楽しみ方ができたんだろうな~

 

Youtubeで探して聴いてみたら、確かにこの曲を使っていた!

ワイル《三文オペラ》全曲 ロッテ・レーニャ - YouTube

 

気になったキャスト

福井晶一:やはり歌の安定感がけた違い。切なさも伝わってきた。

平田敦子:可愛い!こんなに出てくる役だと思わなかったが、出てくると見入ってしまう。魅力的でした。

渡辺いっけい:お芝居の安心感がすごい。声も良くて歌が上手だった。舞台で歌うのは初めてだそうで驚き!