【12本目】serial number07「Secret War~ひみつせん~」@東京芸術劇場シアターウエスト
チラシを見て面白そうだったのでチケットを取った。池袋に用があったのでちょうどよかった!今回は友人と一緒に観劇。
物語
村田琴江(三浦透子)はタイピストとして登沢研究所で働き始めた。そこは、戦争のための研究をする日本軍の施設であった。偽札作り、風船爆弾、一見荒唐無稽な研究者たちの研究は、人体実験を含む細菌兵器にまで及ぶ、それを人は秘密戦と呼んだ。そこで琴江は、細菌や病毒を研究する研究者、市原(坂本慶介)や桑沢(宮崎秋人)たちと儚い関わりを持つ。
46年後、中国北京に暮らす王浩燃(大谷亮介)のところに、科学ライターを名乗る津島遥子(三浦2役)が訪ねてくる。遥子は、登沢研究所について調べていると名乗り、男が第二次世界大戦当時、登沢に勤めていたのではないか、と切り出す。
ふたつの時間軸は交錯しあいながら、登沢研究所でいったい何が行われていたのか、そして、その後、そこに関わっていた人たちはどうやって暮らしていったのか、そして科学と人間の相克を炙りだす。
作演出・出演者
作・演出:詩森ろば
出演:
三浦透子
坂本慶介
宮崎秋人
松村武(カムカムミニキーナ)
北浦愛
森下亮(クロムモリブデン)
佐野功
ししどともこ(カムヰヤッセン)
大谷亮介
詩森さんの作品は、「機会と音楽」を観たことがある。斬新なセットと、ソ連の建築家という馴染みのないテーマが面白かった。あとは映画の「新聞記者」も良かった。
主演の三浦さんは「機会と音楽」に出演されていたのと、最近では大河ドラマで義経の正妻を演じていたのが記憶に残っている。
感想 ※ネタバレ注意
舞台は「登戸研究所(第九陸軍技術研究所)」。そこは「秘密戦」と呼ばれる、諜報や謀略、宣伝といった側面を担っていたのだそう。生物兵器や暗殺用毒物、偽札などの開発が行われた。
登戸は家から割と近いのだが、戦時中、そこに研究所があったとは知らなかった。「ひみつせん=秘密戦」という言葉も初めて聞いた。今はその研究施設を活用して、明治大学の資料館となっている。機会があれば行ってみたいな。
劇場では資料館のパンフレットも置いてあってありがたかった。
舞台の印象は、「とても静か」。
音楽が使われることもほとんどなく、台詞も淡々としていて静かに進んでいく感じだった。そんな中で、主人公の打ち込むタイピングの音がよく耳に残った。
人体実験や動物実験を行っていた研究者たち。
死刑囚に行う人体実験はさぞつらかったろう…。
死刑囚の最後の言葉が、自分を殺す毒薬の味なんて。それを聞く方の気持ちよ…
そして、頭が良かったために戦場に行かずに研究所で戦った人たちがいたことはあまり考えたことがなかった。
人道的にも、国際法規上も問題があることをわかっていながら、陸軍の偉い人から戦場の兵士を引き合いに出されたら何も言えなくなってしまう。
良心の呵責に苛まれて自殺してしまったり、それを目撃してしまったり、戦争の最前線でなくても、本来必要のない苦しみが山ほどあったんだなと思った。
一緒に観劇してくれた友人は、大学で理系に進んで、研究のために動物を解剖したりしていた。
「初めは嫌だったけど段々慣れて作業になる。この先にもっと大きな動物や人間がいると思うと怖くなった」
と言っていた。
ド文系の自分にはない視点で興味深かった。