【1本目】ヒトハダ「僕は歌う、青空とコーラと君のために」@浅草九劇
4月28日に観劇。
「2022年5月からスタートして100本」としているのに、いきなりのフライング…
でも、そうまでして書いておきたいほど強烈に刺さった…!
ヒトハダという劇団の旗揚げ公演。コロナの影響で旗揚げが1年延期になっていたそうで、それもあってか、ほとばしるエネルギーがものすごかった。「エネルギー浴びたぜ~!」という気持ち。
あらすじ
戦後間もない東京近郊にある、米軍御用達のキャバレー「エンド・オブ・ザ・ワールド」。
そこを拠点に、いつか日劇アーニーパイルの舞台に立つことを夢に見る、ロッキー(浅野雅博)、ファッティー(櫻井章喜)、ハッピー(大鶴佐助)の 三人組男性コーラスグループ、「スリー・ハーツ」。
ある日、「エンド・オブ・ザ・ワールド」のママ(梅沢昌代)が連れてきた若い男(尾上寛之)が新たに加入して「スリー・ハーツ」から「フォー・ハーツ」として活動を開始する。
順調にグループ活動を続ける中、朝鮮戦争がはじまり、ハワイの日系二世であるハッピーが朝鮮に出兵することになり四人組の絆を大きくゆるがすことになる―
1950年代アメリカンポップスのヒット曲に乗せて、歌あり、踊りあり、笑いあり、涙ありの劇団「ヒトハダ」第一回公演にご期待ください。
出演者・スタッフ
ピアニスト:佐藤拓馬
脚本・演出:鄭義信
音楽:久米大作
美術:池田ともゆき
照明:増田隆芳
音響:藤田赤目
振付:伊藤多恵
擬闘:栗原直樹
衣裳:冨樫理恵
ヘアメイク:高村マドカ
演出助手:山村涼子
舞台監督:藤本典江、丸山英彦
制作:藤本綾菜
プロデューサー:佐々木弘毅
感想 ※ネタバレあり
ストーリーを一読した程度で観劇。
歌と踊りがあることがわかり、ミュージカル好きとしてはワクワクしながら劇場へ向かった。
浅草九劇という、入ったことのない劇場に少しテンションが上がる!夜公演だったため、外の提灯が光っていてきれいだった。
劇場に入ると、客席とステージの距離の近さに驚いた。今回はキャバレーが舞台だったので、まるで自分もキャバレーの中にいるかのような気持ちになれた。
いざ始まってみると、初めはすごく笑っていたのに、いつの間にやら本気で号泣してしまった…ダンスと歌に合わせて手拍子なんかして楽しんでいたのに…!
登場人物の苦しみがウクライナとロシアの現状とも重なって、とても「過去のこと・演劇の中のこと」とは思えず。旗揚げが一年遅れたことに意味があったのではないかと感じたな。
キャスト別感想 ※超ネタバレあり
お恥ずかしながら、キャストの方は一人も知らず…
演出の鄭義信さんは「かろうじて名前を聞いたことがある」程度だった。
大鶴佐助(ハッピー)
ハッピーは日系アメリカ人。日本人からパールハーバーを爆撃され、さらにアメリカからは「敵」とみなされたという過去を持つ。認められるためにアメリカ軍に入った。
愉快でキュートなのに、ふと、寂しげで思いつめたような冷たい表情をするのが印象的で、目が離せなくなった。
なんでも、唐十郎の息子さんだとか!観劇中はそれを知らなかったが、不思議なカリスマ性や魅力を感じた。覚えました!
浅野雅博(ロッキー)
途中まで過去が語られない。在日韓国人であること、日本軍で特攻隊員であったことが徐々にわかってくる。
ずっと飄々とした感じなのに、過去を吐露する場面の重苦しさといったら…「特攻は行っても地獄、帰っても地獄」。「特攻になれば差別されることもなくなる」と伝えてしまったことで、大切な人を失った。
尾上寛之(ゴールド)
日本語しゃべれるんかーい!というところから始まる。
ハッピーが朝鮮戦争に行くことになったとき、「朝鮮人をころしに行く」ハッピーに怒りを向けていたゴールド。でも本当に根底にあったのは、「ただハッピーに人を殺してほしくない、殺されてほしくない」という気持ち。一人の人間を大切に思う気持ちなんだとわかったとき、なぜ国という存在に翻弄されないといけないんだろうと、考えずにはいられなかった。
櫻井章喜(ファッティ―)
ずっと明るくいてくれたありがたい存在。ゲイであるために、きっと色々な差別を受けてきたのであろうに、劇中では一切語られない。唯一の日本人として、ほかの4人の話をしっかり受け止める役割を担っていて、観客に近い存在だった感じがした。
梅沢昌代(ママ)
なんて素敵な声なんだろうというのが第一印象。心地よい低音。
こちらも在日韓国人で、息子は志願兵として特攻に参加し戦死。彼女がたくさんの辛さを乗り越え、「息子は虹の向こうにいると思っている」と語った時に、もうボロボロに泣いてしまった。(前の人もぽたぽた泣いていた)
ただただ、申し訳ないという気持ちになった。
キャストをはじめ、この作品に関わった皆さんが、演劇を続け、この作品を見せてくれたことに感謝…!
次のヒトハダの公演も楽しみ。