観劇100本ノックの記録

1年間で100本の観劇を試みています。

【24本目】劇団チョコレートケーキ『ガマ』@東京芸術劇場シアターイースト

戦争六篇のラストを飾るのは、唯一の新作『ガマ』。

戦争を回避できなかったこと、朝鮮統治、南京大虐殺、に続き「沖縄戦」という苦しいテーマ…よく向き合えるな、と思う。

 

沖縄戦を取り上げた舞台と言えば、ミュージカル『ひめゆり』が思い浮かぶ。

これも素晴らしい作品で忘れられないが、『ガマ』ではまた違った感情の揺さぶられ方をした。

 

 

あらすじ

一人の軍人と二人のうちなんちゅが逃げ込んだそのガマ。
負傷した少尉は、部下を見捨て民間人を見捨てて退却し、その上死ねずにいることに苦悩している。
高等女学校から野戦病院に動員されていた少女は「聖戦」を信じ抜き、少尉を助けることが御国の為と少尉を看護する。
少女を助ける先生は、別の学校の教師であり、軍の命じるまま教え子と共に動員された。そこで引率する生徒を死なせた彼は、逝った教え子と少女を重ね合わせ、彼女を見捨てられず協力している。
前線が通過し奇妙な静けさを取り戻したガマ。しかし、三人の男がその静寂を破る。
部隊の崩壊と共に目的を喪失し、ただ生きたいと願いさまよう二人の兵とその案内役を務めている動員されたうちなんちゅだ。


アメリカ軍の気配が近付き、ガマに釘付けにされる六人。「あらゆる地獄を集めた戦場」と言われた沖縄で、六人は最後の決断を迫られる…

 

出演

浅井伸治、岡本 篤、西尾友樹(以上、劇団チョコレートケーキ)


青木柳葉魚(タテヨコ企画)/清水 緑/大和田獏

 

感想 ※ネタバレあり

始まりの完全暗転で引き込まれ、そこから2時間、ガマの中の世界にひたった。

それぞれ違った背景の6人が集まったガマ。徐々に明かされる過去と、迫ってくるアメリカ軍の影にドキドキした。

 

ひめゆりの学生が言ったセリフが切ない。(ニュアンスですみません)

「友達はみんな日本人として立派に死んだ」

「友達の死は無駄だったというんですか」

「どうすれば日本人と認めてもらえるんですか」

「生きたいと思っても良いのでしょうか」

当時、沖縄の人たちは日本人として認められたいという気持ちがこんなにあったのだろうか?それは知らなかった。

当時戦死した人たちの死を無駄死にだったなんて言いたくはないけど、意味があったともやはり思えない…本当に、なんてむごいんだ。

 

当時の日本の風潮は「生き残ることは恥」、「投降するなら自決せよ」、「玉砕せよ」。

このガマに集まった人たちはさらに、「指導した生徒が死んだ」「仲間が死んだ」「無実の人を殺した」など自分でも生き残ることに罪の意識を感じている人ばかりだった。

それでも、戦争で3人の息子を亡くした知念の心からの訴えが、ガマの人たちの希死念慮をどうにかこうにか抑え込んだわけだ。

 

ここの大和田獏さんのお芝居に説得力がありすぎて、言葉の重みがものすごかった。

絞り出すような「ぬちどぅ宝」の言葉がずっしり響いて…

 

最後、ずっと薄暗かった舞台が明るくなり、文が白旗を持って前進してきたのを見て涙がこぼれた。

生きる選択をしてくれてありがとう。

死ぬよりも辛い選択かもしれないけど、死なないでくれてありがとうという想いがあふれた。深い感動があったなぁ…

 

苦しみと希望を一緒に感じることができるラストシーンは秀逸だと思う。