観劇100本ノックの記録

1年間で100本の観劇を試みています。

【23本目】『ミス・サイゴン』@帝国劇場

2020年にチケットを取っていたが、その時はコロナで全公演が中止になってしまった。

今回なんとか1公演、東京の千秋楽を観ることができた。

 

 

ストーリー

1970年代のベトナム戦争末期戦災孤児だが清らかな心を持つ少女キムは陥落直前のサイゴン(現在のホー・チ・ミン市)でフランス系ベトナム人エンジニアが経営するキャバレーで、アメリカ兵クリスと出会い、恋に落ちる。お互いに永遠の愛を誓いながらも、サイゴン陥落の混乱の中、アメリカ兵救出のヘリコプターの轟音は無情にも二人を引き裂いていく。


クリスはアメリカに帰国した後、エレンと結婚するが、キムを想い悪夢にうなされる日々が続いていた。一方、エンジニアと共に国境を越えてバンコクに逃れたキムはクリスとの間に生まれた息子タムを育てながら、いつの日かクリスが迎えに来てくれることを信じ、懸命に生きていた。


そんな中、戦友ジョンからタムの存在を知らされたクリスは、エレンと共にバンコクに向かう。クリスが迎えに来てくれた−−−心弾ませホテルに向かったキムだったが、そこでエレンと出会ってしまう。

クリスに妻が存在することを知ったキムと、キムの突然の来訪に困惑するエレン、二人の心は千々に乱れる。

 

したたかに“アメリカン・ドリーム”を追い求めるエンジニアに運命の糸を操られ、彼らの想いは複雑に交錯する。そしてキムは、愛するタムのために、ある決意を固めるのだった−−−。

 

今日のキャスト

メインキャストのみで失礼します。

エンジニア 市村正親

キム 昆夏美

クリス 小野田龍之介

ジョン 上野哲也

エレン 仙名彩世

トゥイ 西川大貴

ジジ 則松亜海

タム 上原琴葉

 

感想 ※ネタバレあり

過去2回の観劇について

ミス・サイゴン」はこれまでに2回観たことがあった。

1回目は小学生のとき、

2回目は大学生のとき、

3回目が今回。

毎回、注目するポイントや感想が変わって面白い。

 

1回目は母と一緒に観た。難しすぎて途中寝てしまい(もったいない…)、ヘリコプターのシーンで起こされ、また寝て、起きたら隣で母が泣いていたことを鮮明に覚えている。

泣いている母を見るのは居心地が悪くて、不機嫌になっていた幼い自分に伝えたい。

「十数年後、おまえも同じシーンで泣いているよ」と。

 

2回目は、さすがに1回も寝なかった。

印象に残ったのは、ドラゴンのシーンとブイドイ。

ドラゴンは、単純に迫力と緊迫感がカッコよくてやられた。ブイドイはスクリーンに映し出された映像に衝撃を受けた。

 

今回

2回目を見終わってから今回までの間に、オリジナル公演、日本公演どちらのサントラもよく聴いたので、ほとんどの楽曲がなじみ深かった。

それもあってか、今までで一番、内容をしっかり理解して観ていたと思う。(とは言ってもまだ「?」な部分もあったのでもったいなかった…もっと予習して行くべきでした)

何回か回想が挟まるから、そこでわからなくなるのよ。

 

ヘリの登場シーンは圧巻。これこれ~!という感じ。

最後はキムとタムを想って涙があふれ、オペラグラスを持つ手が震えた…

「戦争がなければ」とかそういうのを置いておいて、ただただキムが可哀そうで仕方ない、というのが今回の全体を通した感想。

あとはダークホース、トゥイに持って行かれた!詳細は続きに。

 

気になったキャスト

キム(昆夏美

初めて見たときはかなり年上に見えたキムだったが、今やだいぶ年下になった。

戦争で両親を殺され、愛した人には裏切られ。でも子どものために生き抜く強さとすべてを捨てる覚悟を持った女性。こんな人たちが、当時のベトナムにいったい何人いたのだろう?

 

昆さんはいろんな舞台で活躍されているが、生で見るのは初めて。

思ったよりも小柄で幼い顔立ちだったので、辛い運命に翻弄される姿を見て本当に苦しくなった。説得力がある。

小柄でありながら、ものすごい声量と歌唱力で圧倒的な存在感を見せていた。

歌のほかには、トゥイを撃ち殺した後の慟哭が・・・すごい。表情が抜け落ちていてゾッとした。サイゴンを離れるヘリを追う表情、タムを抱きしめる表情、どれも繊細だった。キムがそこにいる、と思った。

 

タム(上原琴葉)

「タム!」と呼ばれて登場した瞬間から、涙腺刺激装置に。

テトテトと走ってキムに抱き着くタムを見るたびに涙腺が・・・お母さんのこと、忘れないでね。でも引け目を感じず、チャンスを掴んで望むものになってね。

 

エレン(仙名彩世)

2年前にチケットを取ったのは、仙名さんのエレンが見たかったため。ようやく叶って嬉しかった!

宝塚の舞台で輝いていた仙名さんが、今度は帝劇の舞台で歌っている姿を見て、グッとくるものがあった。

エレンのキャラクターは、聴いていたサントラにはなかった新しい曲が追加されていて、代わりに一番好きだった曲がなくなっていたのが残念だった・・・いつの間に…

(↑キムとエレンがホテルで会った後のエレンのソロのこと)

複雑な気持ちを抱えながら、タムを育てていくのだと思うと、幸あれと願うばかり。

 

トゥイ(西川大貴)

今回のダークホース!!ここを一番語りたい。

まさかトゥイに目を奪われるとは…これまで注目していなかったキャラクターだったので、自分でも意外でびっくりした。

 

理由として、自分が成長したことで「このキャラクターの見方が変わったこと」と、「西川さんの歌と役作りの良さ」の両方があるんだろう。

これまでトゥイは、「執念深く追ってくる自己中で怖いやつ」と思っていたが、「ベトコンとして戦い抜き、当たり前のように許嫁を迎えに来たら拒絶された」不憫な人物でもあることがわかった。最初はキムのことを純粋に想っていたのに、受け入れられず狂気に向かっていってしまったような・・・

キムを自分の「もの」として考えているのは、今の時代はあり得ないが当時の貧困層では一般的な考え方だったんじゃないのかな?それに、命がけで戦ってきた敵と許嫁が結ばれたなんて、冗談じゃないと思うだろう。

西川さんのトゥイは、終始笑顔がなく思いつめたような表情をしているように見えた。それでも、キムとクリスの結婚式に乱入してきたときは「助けに来たぞ、行こう」という感じだった。それがだんだん困惑に変わり、タムを見て憎しみの感情になっていってしまったような…タムを見てえずいていたのが印象に残った。

親の言いつけを守り、ずっとキムを探していたのに、せっかく偉くなったのに、いつまでも報われない姿が哀れだった。撃たれて亡くなる前、手をキムの頬に伸ばすのも辛い。

あとは西川さん、歌が超上手い。安定していて、圧があって、歌詞が聞き取りやすい。役にもピッタリだった!

カーテンコールは途中まで凛々しくしていたのに、何回目かでちょけ始めていたのも面白かった。笑

 

意外な収穫もあり、とにかく満足の観劇でした。