観劇100本ノックの記録

1年間で100本の観劇を試みています。

【32本目】虚構の劇団『日本人のへそ』@座・高円寺

とても面白かった!

劇団が解散してしまうのは残念だ。

 

 

ストーリー

アメリカ帰りの教授の元に集められた吃音患者たち。彼らはこれから教授の指導の下、「アイオワ方式吃音療法」によって患者の一人・ヘレン天津の半生を題材にした舞台劇に取り組むことになっていた。岩手県の農村に生まれ、集団就職で上京したヘレンは亀戸のクリーニング店に勤めるが、様々な職を転々とした後に浅草でストリッパーとなる。その後、ヤクザの女となり、やくざの親分の情婦、右翼の先生の二号、そして政治家の東京の妻となる。劇はやがてフィナーレを迎えようとしていたが、教授が背中から刺されるという事件が発生する。

(※こまつ座公演のストーリーより)

 

演出家コメント

2007年に旗揚げ準備公演でスタートした『虚構の劇団』は、今回、15回公演
をもって解散することになりました。最終公演は、コロナ禍で2020年に公演
が中止になった『日本人のへそ』です。井上ひさしさんのデビュー作ですが、
若い井上さんの才気とエネルギーに満ちあふれた、まさに、おもちゃ箱をひっ
くり返して、遊び倒した素敵な作品です。そのハチャメチャさ、ワイザツさ、
ぶっ飛び方、遊び方は、ちょっと比類ないものです。この戯曲に、虚構の劇団
の総力を上げて、そして客演俳優達の力も借りて、真正面からぶつかっていこ
うと思います。エネルギー溢れる、混沌とした劇場になれば素敵だと思ってい
ます。

15年間どうもありがとうございました。
解散公演、盛大な花火を打ち上げたいと思います。劇場でお会いしましょう!

 

鴻上尚史

 

キャスト

久ヶ沢徹 鷺沼恵美子 倉田大輔

小沢道成 小野川晶 三上陽永 渡辺芳博 梅津瑞樹 溝畑藍

藤木陽一 辻捺々 木村友美 オカモトマサト 帯刀菜美(ピアノ伴奏者)

 

感想 ※ネタバレあり

戯曲について

井上ひさしのデビュー作ということで名前はよく聞いていたものの、ストーリーは知らなかったので、まっさらな気持ちで観劇した。

 

結果、1幕の割とショッキングな言葉や描写に辟易として、「なんでこんな作品を作ろうと思ったんだろう???」と、頭は「?」だらけに。

 

さらに2幕はテイストががらりと変わって、また「??」状態に。

しかしラストに向けて3回くらいどんでん返しがあって、最後まで目が離せなかった。さすがです。

この「だまされた~!」という感覚に「キネマの天地」を思い出した。

 

教授の超長台詞(青森から上野の駅名を言う)がすごかったのと、ソープで言葉遊びで意味不明の会話するシーンが興味深かったな。

 

そういえば井上ひさしはストリップ劇場で作家をしていたんだっけ。書きながらそれを思い出した。

浅草フランス座だった。ここは渥美清萩本欽一ビートたけしが下積み時代を過ごした場所でもある。さらに本人は吃音症でもあったそうだ。そんな経験が色濃く反映されているんだと思うと、見え方がかなり変わってくるな!

 

 

虚構の劇団バージョンについて

劇団の解散公演にして初めて、オリジナルではなく既存の戯曲を初めて持ってきたということで、この戯曲への強い思いを感じた。

 

これまで何度も上演されてきた戯曲だが、この作品は音楽を自由にアレンジできるので、他の劇団との差別化も図りやすいのかもしれない。

(もちろん俳優もセットも演出も違うので別物になるに決まっているが、音楽まで変えられるというのはミュージカルではまずないことなので新鮮だった)

それでもってこの音楽がかなりキャッチ―で、耳に残ってよかった!

特に「日本のボス」とか「浮気でいいの~」、「一人二人三人のコメディアン」の曲は今でも覚えているくらい耳に残った。

 

この戯曲を他の劇団で観たことがないので比較はできないが、印象としては「とてもパワフル」。

出演者が全員生き生きとしているように感じられて、観ていて楽しかった。

しかし本当にグレーゾーンな台詞や演出が多すぎて(特に一幕)、笑うのを躊躇してしまうことが多々あった。すべて笑い飛ばしていいのかもしれないが、やはり自分の中にあるストッパーがかかってしまったようだ。

 

心置きなく笑えるような戯曲で、虚構の劇団の演劇を観てみたかったなと思った。

 

それから、こう言っては失礼かもしれないけれど、劇団員の中で誰が人気者なのかわからなかったため、どの登場人物が重要になるのか予想しづらかった。そのため、色々な俳優に目が行って、それぞれの演技を楽しむことができた。

 

例えば去年上演された、こまつ座での「日本人のへそ」には有名人が出すぎている。

井上芳雄小池栄子が出ていれば、この二人が重要な人物なんだろうと予想ができる。

それはそれで良いけど、今回は想像がつかないまま見ていたので、より一層、アッと驚くことができたんじゃないだろうか。

 

また新しく楽しい演劇経験ができたことに、感謝です。

【31本目】『FOMULA』@東京芸術劇場プレイハウス

難解だった…

観たのは少し前だが、なかなか感想を書けなかった。

 

会場のロビーには、この公演を作るためにリサーチを行った専門家やダンサーの言葉や作品が飾られていた。見応えがあって、30分以上、開演ぎりぎりまで見ていたと思う。

中でも、森山さん、中野さん、ホチルドさんの脳波が見られるQRコードが面白かった。

 

森山さんの前説から、いつの間にか始まったので、不思議な世界に引き込まれる感じがした。

ほとんど台詞がなく、踊りだけで何かを感じ取る必要があったが、とても難しい。

ショーのダンスは大好きで心躍るのに、こういったコンテンポラリーは「わからない」という気持ちを強く持ってしまう。いつかコンテンポラリーからも何かを受け取れるようになるのだろうか…?

 

 

終演後は中野信子さんによるアフタートークがあった。

内容は「オフレコで」ということだったので書くことができないが、どちらかというと、このアフタートークの方に引き込まれた。トークのおかげで、なとなく理解できたような気はした。

 

 

formula.srptokyo.com

【30本目】『キンキ―ブーツ』@シアターオーブ

友人に誘ってもらい観劇!!

日本での初演と再演があれだけ盛り上がっていた意味がわかった。これは楽しい!多幸感に包まれる舞台で最高だった。

 

 

ストーリー

イギリスの田舎町ノーサンプトンの老舗の靴工場「プライス&サン」の次期社長として産まれたチャーリー・プライス(小池徹平。彼は父親の意向に反してフィアンセのニコラ(玉置成実とともにロンドンで生活する道を選ぶが、その矢先父親が急死、工場を継ぐことになってしまう。

工場を継いだチャーリーは、実は経営難に陥って倒産寸前であることを知り、幼い頃から知っている従業員たちを解雇しなければならず、途方に暮れる。従業員のひとり、ローレン(ソニンに倒産を待つだけでなく、新しい市場を開発するべきだとハッパをかけられたチャーリーは、ロンドンで出会ったドラァグクイーンローラ(城田優にヒントを得て、危険でセクシーなドラァグクイーンのためのブーツ“キンキーブーツ”をつくる決意をする。チャーリーはローラを靴工場の専属デザイナーに迎え、ふたりは試作を重ねる。

型破りなローラと保守的な田舎の靴工場の従業員たちとの軋轢の中、チャーリーはミラノの見本市にキンキーブーツを出して工場の命運を賭けることを決意するが…!

 

キャスト・スタッフ

[出演]

チャーリー・プライス:小池徹平 

ローラ:城田優 

ローレン:ソニン 

二コラ:玉置成実 

ドン:勝矢 

ジョージ:ひのあらた 

パット:飯野めぐみ 

トリッシュ:多岐川装子

ハリー:施鐘泰JONTE

 

ANGELS エンジェルス:穴沢裕介、森 雄基、風間由次郎、佐久間雄生、遠山裕介、浅川文也 

ANGELS/SWING エンジェルス/スウィング:シュート・チェン

 

サイモン・シニア:藤浦功一
ミスター・プライス:松原剛志
リチャード・ベイリー:高原紳輔
マギー:杉山真梨佳
ジェンマ・ルイーズ:久信田敦子
マージ:舩山智香子
フーチ:清水隆伍
マット:増山航平

ヤングチャーリー:小林佑玖 磯田虎太郎 古澤利空
ヤングローラ:高橋唯人 ポピエル マレック 健太朗 高橋維束

 

 

[劇作・脚本]ハーヴェイ・ファイアスタイン

[音楽・作詞]シンディ・ローパー

[演出・振付]ジェリー・ミッチェル

[演出]岸谷五朗(日本語版演出協力/上演台本)

[翻訳]森雪之丞(訳詞) 

 

感想 ※ネタバレあり

とにかく曲が良い!!!シンディローパーすごい!!

そして、エンジェルスがかっkkkこいい!!!ギラギラ輝いていた。

こんなにメッセージ性が強くて、切なくなりながらハッピーで終われるミュージカルだったとは!大好きなシスターアクトに通じる楽しさだった。

キャラクター全員が個性を発揮しているのもとても良かった。

 

成功の秘訣 6つのステップ覚書

1. Pursue the truth
(真実を追いかけること)

 

2. Learn something new
(新しいことを学ぶこと)

 

3. Accept yourself and you'll accept others too 
(自分を受け入れ 他人も受け入れること)

 

4. Let love shine
(愛を輝かせること)

 

5. Let pride be your guide
(プライドを掲げること)

 

6. Change your mind and you'll change the world
(自分が変われば世界が変わる)

 

特に3つ目が印象的だった。ローラに言われたこの言葉に従って動いたドンが、工場を再稼働させたシーンは感動的だったな。

 

 

キャストについて

ローラを演じた城田優三浦春馬と比べるなというのは無理な話。

 

私は三浦春馬のローラを観られなかった。それは本当に本当に残念だ。

過去のゲネプロの映像を観ると、ダンスの切れ、目を引く表情など強いオーラが出ているなと感じる。映像でこれなんだから、生で観たら衝撃的だっただろうな…その体験をしたかったし、もっとそれを見せ続けてほしかったと思ってしまった。

 

でもしかし!!城田優も良かったよ。

ゲネプロの映像を観たときは正直少し不安だったけど、表情やオーラは日に日に磨かれてきているのだと思う。ダンスは苦手なのかなという印象だが(これはもっと頑張ってほしい)、歌がうまいし、想像よりもずっとローラだった!可愛かった!!

老人ホームにいる父親に語り掛けるシーンでかなりぐっと来た。よかったよ。

 

以前の公演を観た人が、三浦春馬の方が圧倒的に良いと思うのは当たり前だと思う。実際すごかっただろうし、そこに思い出も加わるはずなので。

だとしても、それぞれの良さがあることは認めた方が良いんじゃないだろうか。Youtubeゲネプロ映像のコメントを見ると、三浦春馬と比較して何もかもを否定するものがけっこうあって悲しくなった。

中には「英語の歌詞だけドヤ顔ですね」なんていうものも。いやそれは違くないか?!

あとは本人がどんな人かなんて知る由もないのに、それを引き合いに出して批判しているのもモヤモヤする。事実かどうかわからないことで批判しちゃダメでしょう。気になってしまうのはわかるけど。

 

前任者がすごいパフォーマンスをしたことは明白なので、それを引き継ぐのは相当プレッシャーがあっただろうに、そんな中よくチャレンジしたなと思うよ…もっともっと良くなるはず。私はとても楽しかった。頑張ってほしい。

【29本目】『アルキメデスの大戦』@シアタークリエ

この夏、劇団チョコレートケーキの戦争六篇がとても面白かった。その作・演出の二人がそろっていたので期待していて、見事に期待通りの作品だった!

3回のカーテンコールとスタンディングオベーションが、観客の満足度を物語っていたと思う。

ストーリー

1933年、軍事拡大路線を歩み始めた日本。戦意高揚を狙う海軍省は、その象徴にふさわしい世界最大級の戦艦を建造する計画を秘密裏に進めていた。

そんな中、航空主兵主義派の海軍少将・山本五十六は、海軍少将・嶋田繁太郎と対立。嶋田派の造船中将・平山忠道が計画する巨大戦艦の、異常に安く見積もられた建造費の謎を解き明かすべく協力者を探している。

そこで山本が目を付けたのは、100年に1人の天才と言われる元帝国大学の数学者・櫂直(かい ただし)。しかし、軍を嫌い数学を偏愛する変わり者の櫂は頑なに協力を拒む。そんな櫂を突き動かしたのは、巨大戦艦建造によって加速しかねない大戦への危機感と戦争を止めなければならないという使命感。櫂は意を翻し、帝国海軍という巨大な権力との戦いに飛び込んでいく。

櫂を補佐する海軍少尉・田中正二郎や尾崎財閥の令嬢である尾崎鏡子の協力によって、平山案に隠された嘘を暴く数式にたどり着くまであと少し。決戦会議の日は刻一刻と迫っている――。

天才数学者VS帝国海軍、前代未聞の頭脳戦が、ここに始まる。

 

キャスト

櫂 直 鈴木拡樹

田中正二郎 宮崎秋人
尾崎鏡子 福本莉子
高任久仁彦 近藤頌利
大里 清 岡本 篤
大角岑生 奥田達士
嶋田繁太郎 小須田康人
山本五十六 神保悟志
平山忠道 岡田浩暉

米村秀人 神澤直也二村仁弥 高橋彩

 

スタッフ

原作 三田紀房
アルキメデスの大戦』(講談社ヤングマガジン」連載)

台原案 映画「アルキメデスの大戦」
(監督 脚本:山崎 貴/製作:「アルキメデスの大戦」製作委員会)

脚本 古川 健
演出 日澤雄介

 

感想 ※ネタバレあり

菅田将暉主演の映画のイメージが強いものの、映画を観ていない(し原作の漫画も未読)ので今回の舞台が初見。

ストーリーが面白いのはもちろん、俳優陣の熱が伝わってきたし、なるほどという演出もたくさんあってかなり満足できた。

例えば、アメリカに向かおうとする櫂が、船を見送る日本人の未来を想像するシーン。手を振る人たちに突然炎が映し出されたのは怖かった…!

あとは、大和の模型を陰で表現したり、完成した大和の一部のみを舞台上に出現させたり。想像力を掻き立てられた。

 

ストーリーとしては、戦艦大和がなぜ作られたか、その理由が衝撃だった。開戦は避けられないが、日本の象徴、よりどころの船が沈めば、日本人も目を覚まして戦争をやめるだろうと考えていた平山。

そんな思惑があったとは…!でもそうはならなかったね…その目論見が外れたときの平山の絶望が胸に迫った。

櫂の台詞にもあったけど、始まってから止めるのは無理で、そもそも始めてはいけなかった。

 

大和の本当の見積もりを出すというのが物語のメインだが、黒板に式と計算を書き、それと同じ内容が後ろのスクリーンにも表れるという演出は緊張感があった。間違ったらわかっちゃうじゃん!

単純に、あれだけの数字を覚えているのがすごい。さらにセリフも膨大だし、主演の鈴木さん、すごかったです。

 

そんな櫂と、そのお付きになった田中のやり取りがけっこうおもしろくて笑いが起きていた。(そんなに笑う?!というくらい!笑)

 

終わり方があっけなく感じたのが少し残念だった。

大和が沈んでもなお戦争をやめない日本に絶望して、責任を果たす方法として死を選んだ平山に対し、「生きて語り継ごう」と握手をする櫂と田中で終わる。ちょっときれいにまとまりすぎている感じがしてしまった。しかしこれは好みの問題かと!

自分なら、櫂と田中のように生きる道と、平山のように死ぬ道とどちらを選ぶだろう。後者のような気がするな…

※観劇後に映画のラストを確認したら、出航する大和を見送り、「日本を見ているようだ」と涙を流す櫂で終わっていた。個人的にはこちらの方がずっと好き。でも平山が自殺するのも欠かせないと思うし、結局どちらも捨てがたい。漫画はどう終わるんだろう?

 

戦争六編と本作を通じて、日本がした戦争についてだいぶ理解が深まったように思う。たくさんの負の側面を知ったし、いかに無益なことだったかを痛切に感じた。

アメリカと戦争をしたら負ける」と知っていた軍部関係者や偉い人たちはたくさんいたのに、なぜ開戦してしまったんだろう。止めたかったのにどうしようもできなかった人たちの後悔や、巻き込まれた国民を想うと辛くて仕方がない。

今のロシアを見ていて、本当におかしな大統領だ、それを支持するのなら国民もおかしいと思ってしまうけど、きっと当時の日本も外国からそう思われていたんだろうな。

いざというときには、なんとしても戦争には反対の気持ちを表そう。

【28本目】劇団青年座『燐光のイルカたち』@ザ・ポケット

初日に行ってきました。

残念ながら私にはちょっと難しかった・・・

 

 

ものがたり

その都市には南北を分断する壁が建っている。


壁の南側に位置するコーナーショップのオーナー桐野真守は、
北側が年々進める入植計画により、立ち退きを迫られていた。
激しい雨が降り注ぐ夏の終わり。
北から壁を超えてやってきた及川凛は、夕立から逃れる為、
偶然、真守の店に入ってくる。
真守は凛を一目見て、今はもういない弟ひかるを重ね合わせる。
―――――真守はなぜ、ひかるを失ったのか?

だって壁を作ったのは、そもそもそっちからでしょ?

現在と過去が交差し蘇る記憶、そして真守は思いも寄らない現実に直面する。
過酷な現実を懸命に生きる、愛すべき兄弟の、喪失と再生の物語。

京都を拠点に活動するピンク地底人3号
今秋ついに東京の地上に姿を現す

 

作・演出 キャスト

作=ピンク地底人3号
演出=宮田慶子

 

桐野真守  =松田周

桐野一恵  =三枝玲奈

及川凛   =古谷陸

高橋ふみ  =森内美凪

桐野ひかる =君澤透

桐野京子  =野々村のん

桐野健人  =松川真也

工藤丈二  =横堀悦夫

北軍兵士  =須賀田敬右

北軍兵士  =賀久泰嗣

北軍兵士  =澁谷凜音

 

感想 ※ネタバレあり

”国を二分する壁”というと、38度線やベルリンの壁が思い浮かぶ。

それに加えて、ロシアとウクライナの戦争を感じる部分もあった。

終盤の、弟・ひかるの客席に訴えるような叫びが印象に残った。

 

過去と現在が何度も交錯する作りになっていて、「過去なの?今なの?」と考えながら観ているうちによくわからなくなってしまった。

どうもこういった複雑なつくりは苦手だ・・・わからないと眠くなる。

自分の理解力が追い付かず悔しい。「他の観客はこれがわかるのか?」と思い、何度も暗がりの客席の人たちの様子を確認した。わかっているのかどうかはわからなかった。

 

後ろの方の席だったのもあってか序盤の静かなセリフがよく聞こえず、それも物語に入っていけない原因だったように感じる。

感想で内容に触れられるほど、よく咀嚼できなかった。

 

追記)

タイトルにある燐光の意味を知らなかったと思い遅ればせながら調べた。

「燐光」

1 黄燐が空気中で酸化して発する青白い光。また、生体物質が腐敗・酸化するときに生じる光。
2 ルミネセンスの一種。ある物質に光を与えると、その光の補給を停止してもしばらく残光が見られる現象。また、その光。

デジタル大辞泉より

わからない単語が出てきて、その単語を調べるとさらに知らない単語にぶち当たるという感じできりがなかったので、素直に最初に出てきた解説を載せる。

どの意味で付けられたタイトルなんだろうか。

 

あとはこういった記事を読んでから行けばもう少し理解ができたかも、と反省。。

今作は作者がイスラエル滞在中にパレスチナ自治区を訪れた経験をもとに創作した。舞台となるその都市には北と南を分断する壁がそびえ建ち、抑圧する側と抑圧される側に分かれ、いわれなき差別が行なわれている。

 

topics.smt.docomo.ne.jp

【27本目】庭劇団ペニノ『笑顔の砦』@吉祥寺シアター

面白かった・・・じんわり沁みる舞台でした。

大雨の中観に行って良かったし、観劇後外に出たら雨が上がっていたのもなんか良かった。

 

 

公演概要

「この人生、酒のツマミになればいい。」

ただ食って、ただ飲んで、ただただ笑っていたかったー。

 

小さな漁港町にある平屋のアパート。

地元の漁師たちが寝食を共にし住み込んでいる。

そのアパートに認知症患者を持つ家族が引っ越してくる。

賑やかに過ごす漁師たちと、介護に奮闘する家族の部屋が隣り合う。

まるで対照的な二つの部屋、二つの時間。

だが、両者は互いに影響しあい、日常が変化していく。

 

2016年岸田國士賞を受賞したタニノクロウの、物語作品の原点。

昨年のフランス公演を経て、いよいよ国内最終公演へ。

 

作・演出 出演

作・演出:タニノクロウ

 

出演:井上和也 FOペレイラ宏一朗 緒方晋 坂井初音 たなべ勝也 野村眞人 百元夏繪  (五十音順)

 

感想 ※ネタバレあり

細部まで作り込まれたセットにまず驚いた。

舞台を中央で分けて、二つの部屋を見せる形。二つの生活を覗き見する感じでわくわくした。会話の中身も個々のキャラクターもリアルだったなぁ。

おでんやら蟹の味噌汁やらが舞台に本当に出てくる。美味しそうな匂いが漂ってきたり、電気を消した後の暗闇、テレビの眩しさ、朝日などを感じられたり、臨場感が溢れる舞台に没入する感覚を味わった。

 

下手の部屋は漁師たちの部屋。上手の部屋は、引っ越してきた家族(正確に言うと認知症のおばあちゃん)の部屋。

日常が少しずつ積み重なっていく様子に目が離せなかった。

 

特に終盤の夜のシーン。

台詞の無い時間がけっこう長くあった。その中で、二つの部屋では大きな転換期を迎える。

下手では22年勤めた弟分の漁師が退職することを告げに来るようす、

上手では認知症で息子を認識できなくなった母と、息子&孫が描かれる。

暗闇の中でテレビの画面や、冷蔵庫の明かりが煌々と光っていたのが印象的だった。

 

最後、その夜が終わり朝を迎える。

ずっとしんどい展開が続いていた上手の家族の、さくら(孫)が朝ごはんを作った朝と、

ずっと笑いが溢れていた下手の部屋の寂しげな朝に感情が忙しくなった。

53歳のたけさんが言った「一人は寂しい」が胸に迫った。

 

でも、最後の最後にくだらない笑いが全てを明るくしてくれて、

なんだかすごくほっとしたと同時に、

こうやって生きていけばいいんだなと勇気をもらった気がする。

ありがとう、クリントイーストウッド

 

どんなにしんどくても、孤独でも、笑える何かを見つけて生きたい。それを共有できる人が一人でもいたらなお良い。それさえあれば生きていけそうな気がした。

 

場面転換で流れる洋楽も、幕に移る文字も陽気でよかったな~

【26本目】『血の婚礼』@シアターコクーン

タイトルからして悲劇。一体どんな悲劇なんだろうかとちょっと気が重くなりながら観に行った。

1階の後ろの方の席でとても観やすかった!

 

 

あらすじ

南スペインのアンダルシア地方のとある村。母親(安蘭けい)と二人暮らしの“花婿”(須賀健太)は、父親と二人暮らしの“花嫁”(早見あかり)と結婚したいという想いを母に告げる。母親は、溺愛する息子の成長を喜びつつも、ただ一人の家族の旅立ちに複雑な想いがのこる。花嫁は優しく家庭的な娘と聞くが、気にかかる噂がある。息子と恋仲になる以前、心を通わせた男がいるという。男の名はレオナルド(木村達成)。かつて、レオナルドの一族に母親の夫と息子は殺されたのであった。


レオナルドは花嫁との恋が破局した後に、花嫁の従妹と結婚し、今は妻子と姑との四人で暮らしていた。レオナルドの友人でもある花婿は、心配ないと母に明るく語る。
花嫁は、花婿と幸せな家庭を築くと決意していた。しかし、花嫁の目の前に現れたのは、かつての恋人・レオナルド。思いもよらない人物の出現に激しく心が揺さぶられる花嫁。忍び寄る不穏な闇・・。
2人の男の愛がひき起こす、婚礼の日に起きる悲劇とは・・。

 

キャスト

木村達成須賀健太早見あかり
南沢奈央、吉見一豊、内田淳子、大西多摩恵
出口稚子、皆藤空良
安蘭けい

<演奏>古川麦HAMA、巌裕美子

 

感想 ※ネタバレあり

寝不足がたたって疲れていたので寝ちゃうかも・・・と思っていたが、面白い構造のセットや話の展開に引き込まれてしっかり観ることができた!

特に1幕は集中して観た。

 

冒頭のセットは、舞台の前後を壁で分ける感じになっていた。

ドアも穴もなかったので「どこから出てくるんだろう」と思ったら、開演アナウンスの途中に客席から登場。

セットは、ドアや窓となる部分がストーリーに応じて開いていく作りになっていて、なるほどと思った。

 

床は一面が赤い砂(?)のようなもので覆われていた。

途中天井からも砂が降って来て面白かった。

 

花嫁の元恋人が結婚式にやって来て、ついに花嫁と一緒に逃げてしまうというところで1幕は終了。徐々に緊迫感が増していってはらはら!

 

2幕はどうなっちゃうんだろうと思ったら、ガラリとテイストが変わって驚いた。

月や死を擬人化したり、どうしちゃったの?と思ったが、その後はまた元に戻って固唾を飲むシーンが続く。

 

レオナルド役・木村さんと花嫁役・早見さんの、ダンスのような駆け引きのシーンは見ごたえがあった!よくあんな体勢で止まれるな!みたいな。

あとは花婿役・須賀さんとレオナルドの決闘のシーンもすごい緊張感だった。

どちらも役者さんの身体能力の高さがいかんなく発揮されていて、目が離せなかった。

 

最後は3人とも死んでしまうのかと思いきや、花嫁だけ生き残るんだね。

ところどころ比喩的で詩的な表現が挟まって、正直よく理解できないこともあった。こういう時、どれくらいのお客さんがきちんんと理解して見ているのか気になる…