観劇100本ノックの記録

1年間で100本の観劇を試みています。

【17本目】TRASHMASTERS vol.36『出鱈目』@下北沢駅前劇場

演劇好きの知り合いに強く勧められて急遽観劇することに。

休憩なし、あっという間の2時間半だった!

(二週間ほど前に書いてアップするのを忘れていました…)

 

 

公演内容

街を興したい。
私の望みは
ただそれだけだ。

その為に
何がいいかを検討し
アートが妥当だと思い
芸術祭なるものを催した。

それが、まさか
こんな事態になってしまうとは。

芸術とは
一体何だ。
高尚なようではあるが
彼等の表現は
時に
ある者を不快にさせ
ある者を傷つける。

公的な機関で
催した場合
特定の人々が
不利益を被ってはならない。
誰もが認める正義だ。

表現の自由
というのは
そういった範疇においてのみ
約束されたものであるはずだ。

街を興したい。
私の望みは
ただそれだけだ。

芸術祭のアーティスト達には
自治体から
助成金を出したのだ。

それなのに
どうして
彼等は
作品を通じて
政の長である
私を批判をするのだろうか。

こんな国に
未来など
あるはずがない。

 

作・演出 キャスト

作・演出
 
中津留章仁
 
出演
 
カゴシマジロー
ひわだこういち
星野卓誠
倉貫匡弘
長谷川景
藤堂海
[以上TRASHMASTERS
 
石井麗子[文学座
太平[劇団 稲吉]
安藤瞳[青年座

 

感想 ※ネタバレ注意

表現の自由」をテーマにした作品。

大学のころ(一応)ジャーナリズムを専攻していた自分にとっては、なんとなく理解しやすいテーマだった。学生時代に見ていたら、もっともっと感じるものがあったと思う。

表現の自由」と人権のバランスをとるのはとても難しい。

しかし今回は、明らかに行きすぎな人権保護を叫ぶ声が、表現の自由を無視しようとする展開に。

芸術祭を開いた市長はそれを必死に食い止めようとするが、様々な圧力に屈して「表現の自由」をいったんは無視してしまう。

 

途中、めちゃくちゃな理論を展開している女性を呆れながら見ている自分がいる一方で、私自身も、同じような破綻した思想を持っているのかもしれないと感じ、ヒヤッとさせられた。

それ以前に、これといった思想がないのかもしれない。めちゃくちゃを言う以前の問題だった…。

今回は、日本の武力の拡大についても触れられていたが、そのことについて真剣に考えたことがあっただろうか?なんとなく生きていたら、この国は望まない方向に突き進んでいってしまうかもしれない。

人の意見を聞いて、自分の頭で考えて、思想(自分の意見・意志)を持って生きていきたいと思わされた。

 

そして、作者は芸術の力を強く信じているんだなと思った。

芸術祭の賞を受賞した芸術家の言っていることはうなずけた(「どう感じるかは絵を見る人にゆだねているので解説はしない」、とか)し、審査員長の芸術家が言った「劇場へ行きなさい、ライブを見なさい」という訴えにぐっと来た。

 

これからも演劇を通して、自分や社会について考え直す機会を作ってほしい。

コロナの感染再拡大で想像を絶する厳しい状況にある演劇界。なんとかして持ちこたえてほしい。ここで演劇・芸術を切り捨ててはいけないと思う。

 

気になったキャスト

ひわだこういち:芸術家で審査員長。静かで淡々とした性格の人が、自分の正義を守る、芸術を守るために、力を込めて反論する姿がかっこよく印象的だった。

 

倉貫 匡弘:芸術家。第一印象は、「キングヌーにいそう」だった。確固たる自分の世界を持っている、世捨て人のような芸術家という感じがびしびし伝わってきてよかった。未来から来たのかな?と思ったり。